ポルトガル語の日

去る5月5日はこどもの日でしたが、同日は2019年にUNESCOによって「世界のポルトガル語の日」(dia mundial da língua portuguesa)として選ばれました。

ポルトガル語はアンゴラ、ブラジル、カーボヴェルデ、ギニアビサウ、赤道ギニア、モザンビーク、ポルトガル、サントメ・プリンシペ、東ティモールの9か国および中国マカオ特別行政区の公用語で、母語話者人口は約2.6億人(ブラジルだけで2億人強)とされ、世界で最も使われる言語のトップ10にランクインし、南半球では一番使われている言語とされています。

ポルトガル語圏の上記9か国からなるポルトガル語諸国共同体(Comunidade dos Países de Língua Portuguesa – CPLP)に、2015年から日本はオブザーバーとして参加しており、アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development – TICAD)による日本政府が主導する活動もあって、実際にアフリカのアンゴラやモザンビーク向けのODA関連の翻訳案件も多く対応させていただいております。

ユーラシア・南米・アフリカの3大陸をまたいで使われるポルトガル語ですが、言語バリエーション(言語変異)は欧州と南米ポルトガル語の2つで、ブラジル以外では欧州ポルトガル語が主流です。欧州ポルトガル語(葡語)に対して、ブラジル・ポルトガル語は伯語と呼ばこともあります。

ポルトガル語圏の正書法を統一する目的で1990年にCPLP加盟国は新正書法(novo acordo ortográfico)の導入に同意したでのですが、30年余りたった今でもブラジル・ポルトガル・カーボヴェルデの3か国以外では以前の正書法がまだ使われ続けられているのが現状です。

日本では在日ブラジル人が20万人前後いるとされており、コミュニティー翻訳の分野でくらし全般(健康・福祉、医療・保健、労働、教育、防災、在留各種手続等)の重要性も忘れてはいけません。その中で、2019年に大風接近の避難勧告のメッセージで自動翻訳ソフトが使われて、ポルトガル語で「増水の川へ避難を」の誤訳が在日ブラジル人へ発信されたことがまだ記憶に新しい(詳しくはこちら)。人命にもかかわりかねない同じようなミスが繰り返されないためには、年々精度が向上している(?)とはいえ、便利な機械翻訳を過信せず、関係者すべてが責任と誠意を持って地道に取り組まなければなりません。